町家や古民家がオフィスが新しい選択肢になるかも。ここ数年Sansan株式会社が新たな活動拠点「Sansan Innovation Lab」を開設したり、株式会社じげんも京都にオフィスを構えています。オフィスを検討中の総務担当者の皆様にとって、町家や古民家のオフィスは魅力的な選択肢となるかもしれません。
京町家を拠点に―京町家の魅力と配慮点(京町家等継承ネット)を参考に、記事では、町家や古民家をオフィスにする魅力やメリット、設計・インテリアのポイント、選び方や注意点、さらには成功事例や実践的なアイデアまで、幅広く解説していきます。
町家や古民家のオフィスが増えている?
全国で町家や古民家を本社オフィスや事務所として活用する企業や、サテライトオフィス・支店として利用する例が増えてきました。
伝統的な建築様式と現代的な要素が絶妙に融合した木造の風格ある建物や、庭園の美しさは、一歩足を踏み入れるだけで、日常の喧騒を忘れさせてくれます。
また、町家や古民家が残る地域には、その土地の文化や風土に根ざした環境が、従業員の創造性やイノベーションに影響をあたえてくれることも。情緒あふれる風景や伝統工芸品の美しさは、心を豊かにし、新しいアイデアの芽を育むことでしょう。柔軟なワークスペースや自然と調和した環境は、従業員の働きやすさと生産性の向上を促す効果があります。
魅力は建物や環境だけでなく、文化や風土、そしてそこで働く人々とのつながりにもあります。京都をはじめ各地で町家や古民家を活用したオフィスを検討中の総務担当者の方々にとって、地域の魅力を最大限に活かし、従業員のモチベーションや創造性を引き出す理想的なオフィススペースと言えそうです。
町家や古民家をオフィス・事務所として利用する魅力
テナントビルにオフィスを構えるのではなく、あえて町家や古民家にオフィスを構えるメリットについても考えて見ましょう。
文化や自然を感じながらクリエイティビティを発揮しやすい環境
町家であれば、奥庭や坪庭によって、自然光を取り入れ、四季折々の植生の変化といった自然を身近に感じられ、また建具替え、門掃き、打ち水、お祭り、地蔵盆などを通じて、町家に、街にしみついてきた生活文化を間近に触れることができます。
どうしても無機的な環境になってしまいやすいオフィスビルやマンションとは違い、日々自然や文化との対話ができるサスティブルな仕事、ライフスタイルを目指す方にとって、パフォーマンスを発揮しやすい環境になりそうです。
社内外へのブランディングにつながる
町家や古民家でのオフィス設置は、企業のブランディングにも寄与します。
町家や古民家は伝統的な建築様式と文化的な価値を持つ存在です。そのような歴史的な建物をオフィスとして活用することで、企業のブランドイメージに独自性と魅力を伝える機会になります。一般的なオフィスビルとは異なる存在感を持ち、訪れる人々に独特の印象を与えます。社内外のステークホルダーは、企業の持つ歴史や文化に共感しやすくなり、その企業に対する信頼感や魅力を高めることができます。
また、貴重な伝統的建造物の維持・継承に寄与することに加え、再生可能な自然素材の使用やストック活用によってSDGsに貢献し、ESG (Environment、Social、Governance) 経営など企業の社会的評価と信用力の向上につながることが期待できます。
京都に支社を構える企業の中には、関西の学生との距離を近づけるためにあえて町家をオフィスにした例もあります。
比較的安価でオフィス・事務所として活用ができる
例えば京都の町家であれば100㎡ほどの物件が多く、その金額も立地次第ですが20万円〜100万円(かなり立地がいいところ)で利用が可能です。また、ある程度構造のしっかりした町家を選び、当時の素材や雰囲気を生かすことでリノベーション費用も抑えることが可能です。
京都の場合、街がコンパクトなので、上記の金額でどの駅からもアクセスしやすい場所にオフィスを構えやすい点も魅力の1つだと言えそうです。
より人口の少ない都市の古民家を利用すれば、驚くような金額で活用ができることも。サテライトオフィスとして利用を検討するのも魅力的です。
オフィス・事務所の選び方と、町家や古民家ならではの注意点
オフィスを選ぶ際には、メリットだけではなく、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。以下に、町家や古民家オフィスを選ぶ際のポイントと注意点をご紹介します。
解決できるものも多いので、興味があれば是非一度専門家に相談してみてください。
性能や設備
大きな通りに面する場合など、 立地によっては外部騒音対策が必要となる場合があります。長屋の場合は、隣戸からの騒音にも留意する必要があります。 住戸の内部では、上下階の騒音(足音、話し声) や襖越しの物音にも留意する必要も。
また、リノベーションしてない町家や古民家は床、壁、屋根に断熱材が入っておらず、 床下に外気を通す構造で、建具の気密性も低いため、思いのほか夏は暑く、冬は寒いことに驚きます。 また、網戸を設置してない場合、虫が入り込むこともあり、設置が必要になる場合があります。
設備としては、収納の問題が考えられます。押入れなどの収納スペースには通常鍵がないので 必要に応じて鍵を取付けたり、新たに収納スペース を作ったりするなどの対策が必要となります。また、長年リフォームがされていない建物の場合、トイレや手洗いなどの水回りが古く、オフィスとして利用するためには、増設やリフォームなどの投資が必要になります。
ワークスペースの柔軟性
町家や古民家は居住用に使用されていたものから、職住タイプのものまで、その背景が異なります。それぞれ間取りが異なるため、オフィスを選ぶ際には、従業員のニーズや要件を把握することが重要です。もちろんリノベーションで対応できる部分も多いので、従業員の意見や要望を十分に聞き、働く環境に求める条件や機能性を考慮しましょう。
例えば、集中力を高めるための個別作業スペースやコミュニケーションを促進する共有スペースなど、従業員が生産性を発揮しやすい環境を提供することが重要です。
オフィスの選び方には慎重さと柔軟性が求められます。立地条件や改築の費用、従業員の要件など、様々な要素を総合的に考慮し、最適なオフィスを選びましょう。
リノベーションの必要性
上記のように、リノベーション済みの物件に入居する場合を除き、手を入れる必要があります。居抜きのオフィス利用以外では、自社の文化に合わせたオフィス設計をおこないますが、町家や古民家の場合、建物の状態によってかかる費用と手続きについても注意が必要です。
事前に費用や手続きについて詳しく調査し、予算や期間を把握しておくことが重要です。また、文化財や歴史的な建築物である場合は、地域の要件や制約にも留意しながら計画を進めましょう。
町家や古民家ならではの魅力と機能性が融合した魅力的な選択肢です。心地良い環境づくり、クリエイティビティの向上、社員の満足度と生産性の向上など、多くのメリットを提供します。オフィス・事務所の設計とインテリアには工夫が必要であり、立地条件や従業員のニーズを考慮しながら選ぶことが重要です。
さらに、成功事例や実践的なアイデアを参考にしながら、町家や古民家のオフィス・事務所を活用して最適な働き方を実現しましょう。まずは、コワーキングスペースの活用を選択肢として考えてみてもよさそうです。
町家や古民家オフィスの魅力とポテンシャルを最大限に活かすためには、慎重な計画と柔軟なアプローチが求められます。物件選びも大変だと思いますので、オフィス・事務所を検討中の総務担当者の皆様は、デジタル町家バンクや、デジ町京都特集を参考にしながら、理想のオフィスを探してみてください。